奥秩父・釜の沢東俣~甲武信岳 2023.10 やまづと

2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)

千畳のナメを歩く

水のある景色が好きだ。

2022年12月、沢登りがしたくて「やまづと」の仲間に入れてもらった。

例会でSさんに「体力がなければ沢登りはできない」と耳の痛いことを言われた。

悔しいので、次のシーズンまでになんとかしようと山に通った。

2023年3月、良い調子になってきたところでアクシデントに遭い、救急車で運ばれて死にかけた。

「晴天の霹靂」は日常にも転がっているのを忘れていた。

「九死に一生を得た」ことで、自分の中の価値観が大転換した。

沢登りをしておかないと、死んでも死にきれないと思った。

7月、Sさん、Yさん、Iさん、Kさん達が新人のために買い出しツアーを企画してくれた。

必要なギアの説明を聞きながら、シャワークライミングを想像して口元が緩んだ。

それから三ヶ月で6回を数える沢登り、沢歩きができたことに感謝と充足感。

大袈裟ではなく、生きていてよかった。

10月、今季の沢は終わりかと思っていたところ、Sさんが「泊り沢」を企画してくれた。

初めて沢の本を購入した4年前には、日帰りまでしか想定していなかった。

一人では想像もしなかった未知の世界へ、グングン引き込んでくれる仲間がいてくれるのが有り難い。

装備不足、日程調整、家族了承、体力不安、帳尻は後で合わせることにして、即答で参加を希望した。

Sさんが出してくれた山行計画、地図を元に想像を膨らませて準備を始める。

頼りにしていた同期のOさんは怪我で断念、自分以外は猛者ばかりになった。

経験値を高める目的に絞って「初めての泊沢体験」をすることにした。

荷物の準備に難儀することも、山行中不便があろうことも全て受け入れ「敗北主義」で臨むことにした。

28日の朝、集合前に身支度をしたいと思い、少し早く塩山駅に到着した。

ロータリーにはYさんの車が停まっていた。運転席の彼は、早朝にも関わらず起きている。

N坂さん、Sさん、N村さんが来て、5名全員集合。

道の駅みとみへ向けて出発した。

Yさんとの山行では、下山後温泉に行けるのが嬉しい。

事前のメールに「車出すので温泉道具は車に置いていけます」という有り難いお言葉。

道の駅から歩き出すと、YさんとN坂さんが今季の沢へ何度行ったかという話になった。

二人は25前後の数字で拮抗してしているそうだ。

それから、今回参加予定だったOさんは北アルプスへ行くのが夢だったようで、三ヶ月で実現してしまったそうだ。

7月の買い物ツアーで、大きなザックに重りを入れて背負い「これにします!」と言っていたのを思い出す。

Sさんは昨年の沢で怪我をして現在もリハビリ中。その話を聞いても、自分にはピンと来ないような良い動きをしている。

N村さんからは、以前沢でご一緒した息子さんの近況を教えてもらい、元気でいることに安堵する。

山の仲間は不思議な存在だと思う。

そして、他の団体は知らないけれど、やまづとには多種多様な人がいるのが好きだ。

やまづと(山苞:山から持ち帰るみやげ。山里のみやげ)という名前もチャーミングだと思う。

5年後、10年後、30年後、やまづとはどう変わっていくのか、その時自分は何ができるのか。。。

しばらく続く下りでは会話思考する余裕もあったけれど、装備を着けてからは修行専一だ。

荷物に耐えて、できるだけ遅れないように、滑らないように転ばないように、冷たくならないように濡れないように。。。

砂がつくと、岩場で滑る。荷物の大きさが気になって、岩場の移動がバランスよくできないのでは。。

上りでは息が上がって苦しい。。。

N村さんが前を行く時、距離が開きすぎないように常に気を配り、優しく声をかけ続けてくれる。

N坂さんが後ろから来てくれる時には、ふわりと後押ししてくれる。

しんがりを務めてくれるSさんは、足運びなどのコツを教えてくれる。

先頭を行くYさんはベストなタイミングで奮起を促してくれる。

暗くなり始めた頃「極上物件」にて幕営開始。

明朝まで使用する分量の薪を拾う仕事、タープを張る仕事に分かれる。

落ち着いたところで、靴を履き替え防寒着を着けて荷物整理。

火熾し、夕食の準備。

水場の近くで焚き火をすることは、炊事用水を汲みやすいだけでなく、翌日の後始末をする上でも重要だ。

Sさんは、原状回復を心がけていることをさりげなく教えてくれた。

夜は風上になるはずの山側に座っていたN村さん、呼吸も視界も失う程の煙に襲われていた。

Sさんが「焚き火の煙は、美男美女の方にいく」と言っていた。

N村さんおすすめの「ボンベイサファイヤ・カルピス」口にしなかったのを今も後悔している。

いいちこと「ちゃんぽん」になるのが不安だったのだ。

同じ理由で、N坂さんの日本酒も断っている。

お酒の強い人が羨ましい。

22時頃お開き、就寝。

Yさんがセッティングしてくれたタープは、向き、角度、高さが絶妙で、驚くほど快適だった。

初めてのタープ泊、嬉しくてなかなか寝付けないかと思ったけれど、誰かの寝息を聞いているうちに、フワフワしてきて入眠。朝までグッスリだった。

翌29日、5時にYさんの声掛けで起床。

先に起きて火を熾し、朝食の準備もしてくれている。

猛者たちは朝の準備もシュラフの片付けも手早く済ませる。

自分はもたもたしているけれどauもあり、快調。

優雅な朝の時間を過ごし、身も心も温まったところで出発準備。

濡れたウエア、靴下、靴を着用し、無言の行。

急な上りが表情を変えて次々現れる。

Sさんが試行錯誤しながら、不自由な足を運んでいる様子に「自分も負けずに頑張ろう」と、勇気をもらう。

N村さんは、ポンプ小屋までペースやルートを合わせてくれた。

Sさんは水源の水をボトルに汲んで美味しそうに飲んでいた。

N坂さんは最後のツメも軽やかに上っていた。

Yさんは甲武信小屋前のベンチで装備解除と休憩、荷物をデポして甲武信岳頂上に向かうと教えてくれた。

Yさんの発声でダッシュしたけれど、2mでこときれた。

N坂さんはあっという間に、見えないところまで行ってしまった。

遅い自分が申し訳なくて、先に行って欲しいと伝えた。

Yさんは「来るまで待っているよ」と言ってくれた。

ようやく皆に追いついて、歩いて来た谷の景色を望んだ。

「隠された、上からは見えないところを登ってきたんだ」と思った。

頂上までは全員一緒に歩いた。

標高2475mあるので、さすがに寒かった。

下りではYさんの後ろを歩かせてもらった。

走るように下っていた。

バランスを取るためには一定のスピードでリズミカルに動くのが良いように思った。

写経を思い出した。

Sさんは植物を楽しみながら下りていた。

N村さんは動物を楽しみながら下りていた。

N坂さんはお喋りを楽しみながら下りていた。

Yさんは修行を楽しみながら下りていた。

振り返ると、最初から最後まで「お荷物が荷物を背負って動いている」ような存在だった。

でも、誰もそれを責めることもなく、それぞれのスタイルで励まし応援し、助け、導いてくれた。

初心者の自分を下に見ることもなく、仲間として接してくれた。

皆さまのおかげで、これからの課題、改善策、夢や希望などが見えてきたように思う。感謝しかありません。

来年は3月から11月までの九ヶ月間で20回は行きたい!

行けば行くほど好きになる。

知れば知るほどハマっていく。

沢ヤッベェー、マジ最高。

1日目

2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)

別格な印象のアプローチ
1ヶ月前から準備を開始したのにもかかわらず、初めての泊沢はザックの重さも格別に感じる。

2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)

美しい紅葉

無駄な荷物下手なパッキングをひたすら反省、景色を楽しむ余裕なく黙々と歩を進める。

2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)

乙女の滝50mザックを置いて腰を下ろし、ゆったりと景色を愉しむ。

2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)

ダイナミックな自然美

あの「ハーフドーム」と同じ花崗岩。あなたならどう表現して、誰に何を伝えますか?

2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)

白い一枚岩の滝300m展望良く、自分が峡谷を通って遡上していることを実感する。ゴーロ先、右俣に見える

川筋が「東のナメ沢」

2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)

入水最高値地点冷たいのは嫌だ、濡れたくない、滑りたくないという思いが強すぎて、かえって

胸まで浸かる羽目に陥る。N坂さんの一言で「

沢登りは濡れる前提」だということを思い出す。

2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)

西のナメ沢10m紅葉に隠れた横に広がりのある滑り台だ。

2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)

見事な体幹のYさん明るく統率力があり、企画実行判断力、想像力が抜群。

2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)

白い岩床とエメラルドグリーンの水甘美な雰囲気に癒されつつ、冷たい現実と闘う。

2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)

(釜の沢出合?)スラブ登攀一見使えそうにない小さな凹凸もホールドになり得る。

2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)

(魚留めの滝上)厳重注意
万が一滑ろうものなら、数十メートル、数百メートル先までノンストップで滑落する危険性がある。

2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)

千畳のナメ滑らかな水の流れ、明るく開放的な雰囲気に心踊り、寝転がって

足元の造りを確認したい衝動に駆られる。童心に返りたい人におすすめだ。

2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)

両門の滝30m東西二俣が出合う地点で記念撮影。釜の中、赤青黄色とりどりの葉が寄せ集まっている様は、上質な生和菓子を彷彿させる。

2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)
2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)

焚き火薪を拾い、火を熾し、体を温め、食事を摂る。旬の炭火料理を囲んで、ミニマムな人間の営みを心底味わう。

2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)

ピーマン鍋味噌味の豚汁に数種類のキノコとナス、ピーマンを使う滋味、Sさん自慢のメニュー。鍋一杯の量をあっという間に平らげた。

2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)

炊飯重い米を持参して炊いてくれるYさんに驚嘆する。

2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)

月光昨晩は十三夜、明晩は満月、今宵は

未完のほぼ満月。縁起よし、明るさよし、天気よし。

2日目

2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)

明けの明星 金星昨晩の煌々と照る月の左下に見えていたのは木星でした。

2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)

朝の焚き火。
暖かくてうれしい。

2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)

朝食N坂さんが煙と格闘して作ってくれた「

茗荷入りウインナーソテー」と、Yさんこだわりの「炊きたてご飯のお茶漬け」

茗荷のスッキリとした香りと食感がウインナーに合う。お茶漬けはサラサラと食べやすく、すぐに体が温まる。

2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)

極上の物件安全面は当然のことながら、水場からの距離、薪の豊富さ、平坦な地面など、野営地を決める基準は様々だ。秀逸なタープ設営のおかげで、安心して快適な一晩を過ごした。

2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)

濡れ装備冷たい装備品に言葉を失い、寡黙にスタートする。

足元は原始的で荒々しい伏流、見上げると優雅で目映い紅葉が広がる。

2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)
2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)

軽快な身のこなしのN坂さん

あらゆる場面で軽やかにそして素早く動く姿は、見ているだけで心地良い。

2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)

あと少しでポンプ小屋急な傾斜に萎えそうになる中、Yさんの鼓舞激励が有り難い。ヨォッシャァアー、もうすぐ水源じゃー!

2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)

甲武信岳2475m甲州、武州、信州にまたがるピークで記念撮影。登ってきた渓谷を上から望むと、深い自然に抱かれていたことを実感して、ここに至るまでの全ての瞬間が愛おしくなる。雪、Yさんが喜ぶ姿を見て、こちらも嬉しくなる。
ムードメーカーのN村さん気配り目配り手配り口配りに、何度も助けられる。後方で微笑むSさんは誇り高き山屋、知識経験が豊富な頼れる存在。
コシアブラの落葉Sさんの真似をして茎の部分を齧ると、タラの芽に似た香りと味がする。

来春は新芽を天ぷらで食べたい。

2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)
2023.10.28-29 釜ノ沢東俣(沢登り)
カテゴリー: 2023年山行一覧